Tell me, DD!
最終更新日:2026.06.17
ティースプーン1杯の旅。
1匹のミツバチが一生をかけてつくる、はちみつの軌跡。
私たちが何気なく口にしている、はちみつ。その一滴が、どのように生まれるのかをご存じでしょうか。1匹のミツバチが一生をかけてつくるはちみつは、わずかティースプーン1杯ほど*1。花から蜜を集め、巣へ運び、仲間たちと力を合わせて熟成させる――。その小さな一滴には、ミツバチの膨大な時間と営みがぎゅっと詰まっています。今回は、はちみつが食卓へ届くまでの「はちみつの旅」をたどりながら、その一滴に込められた物語をのぞいてみましょう。
*1 諸説あり、ティースプーン1/12杯(約0.8g)程度とする研究もあります。
まず、ミツバチが集めるのは「蜜」じゃない?!
私たちが普段口にしているはちみつ。少し意外かもしれませんが、ミツバチが花から集めてくるものは、最初から「はちみつ」ではありません。
ミツバチが花から運んでくるのは、「花蜜(かみつ)」と呼ばれる甘い液体です。
花蜜は、植物が受粉を手伝ってもらうために用意したもの。水分をたっぷり含んでいて、そのままでは私たちが知るはちみつとはまったく違います。
この花蜜が、ミツバチの働きによって少しずつ姿を変えていきます。つまり、はちみつは自然が生み出したものではなく、ミツバチたちの手によってつくられるもの。
あの黄金色の一滴は、お花とミツバチが力を合わせて生み出した特別な贈り物なのです。
花から巣へ――蜜を運ぶ旅
花蜜は、どのようにしてはちみつになっていくのでしょうか。
その旅のはじまりは、働き蜂たちの採蜜活動です。
外で働くミツバチ(外勤蜂)は、花から花へと飛び回りながら蜜を集めています。1日に訪れる花の数は、なんと約2,000輪ともいわれています。
見つけた花蜜は、口から吸い上げて「蜜胃(みつい)」と呼ばれる専用の袋へ。ここは食べ物を消化する胃とは別の、花蜜を運ぶための特別な場所です。
蜜胃いっぱいに花蜜をためると、その重さは自分の体重の半分近くになることもあります。
それでもミツバチたちは、花咲く野原から巣へと何度も往復します。時速約25kmで風を切りながら、小さな体いっぱいに蜜を抱えて飛び続けるのです。
そして巣へ戻ると、集めた花蜜を巣の中で働くミツバチ(内勤蜂)へ口移しで受け渡します。
この瞬間から、花蜜は少しずつ姿を変え始めます。ミツバチの唾液に含まれる酵素が混ざり、はちみつへの長い旅が動き出すのです。
花で生まれた甘いしずくは、たくさんの仲間たちの手を渡りながら、少しずつ黄金色のはちみつへと近づいていきます。
巣の中で起きていること
巣へ運ばれた花蜜は、そのまましまわれるわけではありません。
巣の中で働くミツバチ(内勤蜂)が受け取り、口に含んでは吐き出す動作を繰り返します。この工程を「転化(てんか)」といい、酵素の働きによって花蜜は少しずつ変化していきます。
その後、花蜜はミツバチの巣をつくる六角形の小さな部屋「巣房(すぼう)」へ蓄えられます。
しかし、この段階ではまだはちみつではありません。花蜜には多くの水分が含まれているため、内勤蜂たちは翅を羽ばたかせて風を送り、水分を蒸発させていきます。
何百匹ものミツバチたちが協力しながら数日かけて水分を飛ばし、花蜜はゆっくりと濃縮されていきます。
こうして、黄金色のはちみつが少しずつ育まれていくのです。
熟成と、はちみつが完成する瞬間
ミツバチたちが風を送り続け、水分量が約20%以下になると、いよいよはちみつの完成です。
その合図となるのが「封蓋(ふうがい)」。
ミツバチたちは、熟成を終えたはちみつを蜜蝋でできた白い蓋で閉じます。この封蓋は、「おいしいはちみつができました」というミツバチからのサインでもあります。
封蓋されたはちみつは、とても保存性が高いことで知られています。実際に、古代エジプトの遺跡から数千年前のはちみつが発見されたという記録も残っています。
花から運ばれた一滴の花蜜は、たくさんのミツバチたちの手を経て、ようやく一滴のはちみつになるのです。
採蜜――養蜂家がはちみつを受け取るとき
ミツバチたちが大切に育てたはちみつ。封蓋が確認できると、いよいよ養蜂家による採蜜が行われます。採蜜は、ミツバチたちの住まいを一時的に開ける作業。だからこそ、ミツバチの様子を見ながら、できるだけ負担をかけないよう慎重に進められます。
まずは封蓋された巣板を巣箱から取り出し、蜜蝋の蓋を開けます。その後、遠心分離機を使ってはちみつを抽出。さらに丁寧にろ過を行い、瓶詰めされます。こうして、花から始まった小さな旅はようやく終着点へ。
たくさんの花を巡り、多くの仲間たちの力によって育まれたはちみつが、私たちの食卓へと届けられるのです。
STEP 1 巣箱を開ける
蜂の様子と機嫌を確認。羽音や動きで群れの状態を読んでから作業を始めます。
STEP 2 巣板(すいた)を取り出す
封蓋された巣板を慎重に取り出します。ミツバチを傷つけないよう、ゆっくりと丁寧に。
STEP 3 蜜蓋を削る
封蓋(蜜蝋の蓋)を専用のナイフで削り取り、巣房を開けます。
STEP 4 遠心分離
巣板を遠心分離機にかけ、回転の力ではちみつを抽出します。巣板自体は再利用可能な状態で返します。
STEP 5 ろ過・瓶詰め
不純物を取り除いて濾し、瓶に詰めます。加熱処理を最小限に抑えることで、酵素や栄養素をできるだけそのままに保ちます。
HACCI養蜂家DDに、もっと聞いてみました
ミツバチの世界をのぞいてみると、まだまだ気になることがたくさん。
そこで、HACCI養蜂家のDDに直接聞いてみました。ミツバチたちのこと、養蜂のこと、そしてDDだからこそ知っている小さな発見まで。ここからはQ&A形式でお届けします。
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Q1 採蜜のとき、どんな気持ちになる?
「いただいている」という感覚が、毎回あります。ミツバチが何日もかけて、何万回も羽ばたいてつくったものを、受け取らせてもらっている。
封蓋された巣板を見るたびに、「ちゃんと完成したんだ」ってほっとするというか、ありがたいなって思う。単純作業じゃなくて、毎回ちゃんと感情が動きます。あくまでも養蜂家はミツバチのサポーターですから。
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Q2 採蜜するとき、ミツバチとの向き合い方で意識していることは?
まずミツバチの機嫌を見ること。その日の状態がよくなければ(天候も含めて)、作業をやめます。無理に進めると蜂にストレスがかかるし、こっちも刺されるリスクが上がるし。
はちみつは奪うものじゃなくて、受け取るものだと思っています。だから蜂が「今日はいいよ」って感じの状態じゃないときは、また明日来ます。相手のペースに合わせる、それだけです。
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Q3 HACCI BEE FARMのはちみつは、他と何が違うと感じる?
一番は花の多様さだと思います。伊勢の養蜂園では、120種以上の植物が年中咲いています。季節によって咲く花が変わるから、その季節ごとに蜜の種類も成分が変わってくる。
単一の花から採った「単花蜜」とは違う、複雑な奥行きがある。春のはちみつと夏のはちみつで風味が全然違う。それがBEE FARMのはちみつの個性だと思っています。
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Q4 ティースプーン1杯と聞いたとき、最初どう感じた?
衝撃でした。1匹のミツバチが一生かけてつくるはちみつが、ティースプーン1杯分。それを聞いてから、はちみつを舐めるたびに「何匹分だろう」って考えるようになった(笑)。
ちなみに別の研究ではティースプーン1/12杯(約0.8g)という説もあって、どちらの数字にしても、とてつもなく少ないことに変わりはない。何万回も花を訪れて、何千回も羽ばたいて、時間をかけて熟成させてできたもの。その密度が、あの甘さに詰まっているんだと思います。
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Q5 はちみつをもっと大切に使ってほしい?
はい。でも「少なく使って」って言いたいわけじゃなくて、知ってほしいんです。どうやってできているか、どれだけの命の時間が入っているか。
知ったうえで食べると、味が変わると思う。認識も変わると思う。
同じティースプーン1杯でも、重さが全然違って感じられるはずです。そういう体験をしてほしいなって、いつも思っています。
まとめ
何気なく口にするティースプーン1杯のはちみつ。その一滴には、数えきれないほどの花との出会いと、たくさんのミツバチたちの時間が詰まっています。次にはちみつを味わうときは、そんな小さな旅にも思いを巡らせてみてください。
- ミツバチが集めているのは、はちみつではなく「花蜜」
- 花蜜は外勤蜂によって花から巣へと運ばれる
- 巣の中では内勤蜂たちが協力し、花蜜をはちみつへと変化させる
- 翅を羽ばたかせて水分を飛ばし、じっくりと熟成させる
- 完成したはちみつには「封蓋」がされる
- 養蜂家は、ミツバチたちが育てたはちみつを丁寧に受け取る
この記事は、HACCI BEE FARMの養蜂家 DD水谷 監修のもと制作しています。
- DD Mizutani
- 1993年生まれ。100年以上続く養蜂家・水谷家の一員として生まれる。
幼少期からミツバチとともに育ち、現在はHACCI BEE FARMにて、ミツバチが健やかに暮らせる環境づくりを軸に養蜂を行っている。
HACCI BEE FARMでは、ミツバチが一年を通して過ごしやすい環境づくりに取り組み、自然と共生する養蜂を実践している。
自然と共生する養蜂を通じて、はちみつの新たな価値や可能性を探求している。
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